死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン

【 時代を越えて受け継がれるオールドヴィンテージワインを飲んだ方々の体験談をご紹介しています 】

【私の人生を変えた一本のワインNo.18】カロン・セギュール1966

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カロン・セギュール1966】

私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン

 この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。 

  突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?

 ではなく、、、

 本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。

本日インタビューしたのは、この方

片岡 しょうた さん(会社員)

EXPLORERS CLUBにて、フランスのニースで開催される『ニースアイアンマン2017』に出場し完走。その後、2018年、2019年とモナコ公室主催『薔薇の舞踏会』に出席。

 

①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?

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カロン・セギュール1966

2018年の3月に、EXPLORERS CLUB主催のワイン会で飲んだ『シャトー・カロン・セギュール(Château Calon-Ségur)1966』53年前のワインです。

※シャトー・カロン・セギュール(Château Calon-Ségur)とは?

「サン・テステフのシャトー・マルゴー」と例えられ、常に格付け以上の人気を誇る実力派シャトー。18世紀に、当時カロン・セギュールと共に、ラフィットやラトゥールを所有していた、ボルドーの議会議長ニコラ=アレクサンドル・ド・セギュール侯爵が「われラフィットをつくりしが、わが心カロンにあり」と、その思いをハートのラベルに込めたことはあまりにも有名。

18世紀にセギュール侯爵がシャトーを所有してからは、徹底的な品質主義がシャトーの根底に根付き、20世紀になると1級シャトーに匹敵するほどのワインを生産する。「長い熟成を経て花開く、典型的なボルドーワイン」と評価されている。

※1966年(昭和41年)の出来事

日本の内閣総理大臣は、自由民主党佐藤栄作氏。

 

②なぜ、『シャトー・カロン・セギュール(Château Calon-Ségur)』を選んだのでしょうか?

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カロン・セギュール1966

 1966年というヴィンテージのワインの「抜栓をすることができる人間になる」いうことが、僕の中で大きな出来事だったので、このワインを選びました。

 実は、このワイン会には、有名ホテルのソムリエが来ていて、その人もなかなかこんなオールドヴィンテージワインを抜栓する機会は無いと言われていたんです。そんな中、そのワインを抜栓させていただく機会を得て、一発でしっかり抜栓することができた。

 自分の力で開け切ることができた自分に対して、大きな自信がついた。だから人生を変えた一本として選びました。

 

③どんな抜栓だったんですか?

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カロン・セギュール 抜栓

 抜栓に指名されたのは、ワイン会当日の準備の時に指名されました。その時、「カロン・セギュール1966」のマグナムボトルだったので参加者が20人ほどいました。

 実際にワインと対峙したのですが、52年の熟成の割には保存状態が良く、キャップもきれいでスムーズに外せました。コルクにカビはそこまで付いてなくて、少し取り除いて拭いてあげれば取れるぐらいだったので、非常にやりやすかったです。

 それから、ソムリエナイフのスクリューを刺していくんですが、純粋にいろんな雑念というか要らない思考を削ぎ落として、ワインとコルクだけに集中。じっくりとワインの状態を見ながら、ソムリエの方からのアドバイス「コルクの状態がこうなんでこの斜めの角度から入れて最後はまっすぐに入れていくのがいいよ」と、それを言われた通り言われたままにワインの状態を見ながら入れていったような感覚でした。

 

 コルクの感触は、柔らかくて脆い感じはあって、変な力が入ると千切れてしまいそうな感覚もあったので、ワインのコルクが素直に出てくるよう意識して、コルクからソムリエナイフに伝わってくる感覚を全神経で感じながら、焦りすぎず、徐々に徐々に優しく入れていくような感覚でした。

 それはもうコルクとの対話ですね完全に。周りの状況とか全く気にならない状態でした。オールドヴィンテージワインの抜栓をしたことがない人は、感覚的に伝わらないかもしれませんが、ワインとの対話ってできるんです。

 

④どのように愉しまれたのですか?

 人だけじゃなくて、物もこうしてほしいっていうのが五感を研ぎ澄ましていると感じることができるんです。もっと分かりやすく、例えると、シールが物に貼っていて、そのシールを剥がす時もきれいに剥がせる人と剥がせない人がいます。ノリが残っちゃって、シールがビリビリになっちゃう人ですね。

  剥がしながらシールがどれぐらいのテンションをかければ一番きれいに剥がれるかっていうのは感覚としてあると思うんです。物の状況を見て、視覚的にも触覚的にも五感を研ぎ澄ませれば、今コルクがどういう状況というのは伝わってきます。

 オールドヴィンテージワインの抜栓というのは、1分で1ミリ上げるぐらいの感覚と言われます。それで抜栓するのに20分〜30分。下手したら1時間かかったりするのが普通です。微妙な力加減もコルクを上に引っ張ってると伸びたりしてる感覚が伝わってくるので、それを敏感に感じながら、ずっと待ち続けて我慢強く訴え続ける感じです。

 

⑤抜栓は順調でしたか?

 コルクは途中で、下3分の1くらいの所で折れました。3分の2だけポンッと抜けた感じで、それで挿し直す方が難しくて、残ってるコルクの状態を見て一番しっかり土台が残ってる所を見極めて、そこにまたコルクを見ながらスクリューを挿していくような感じでした。

  ニ回目で見事に抜けましたが、ワインにコルクが入ってしまうと、一発で味が変わってしまいます。20人が楽しみにしているワインですので、絶対に最高の状態で飲まなければいけないと意識してました。

 

 そして、オールドヴィンテージワインの愉しみの一つでもある、抜栓者が一番始めにアロマを愉しめるという特権ですが「ついに出会いましたね」っていう感じでした(笑)

 コルクが折れた時にはまだでしたが、コルクがほぼ抜けきった手前ぐらいから、ちょっとずつ香りが広がり出して。それって抜栓してる人にしか分からないんですよね。周りで見てる人は感じなくて僕だけが感じる。こう徐々に徐々に顔が見えてきてる感じで、なんかドキドキする。これは抜栓した人だけの特権ですね。

 

⑥一口目はどんな感じだったんですか?

 僕は、爽やかな印象があって、スッと入ってきて受け入れてくれたのかなという感覚があります。今回は、マグナムボトルだったので、一本の量が多いので、サーブし始めた最初と最後に入れたグラスで香りが全然違ったんです。なので20人にサーブするんですけど、最初にサーブされた人と最後にサーブされた人で、もう全然香りが変わってました。同じものを飲んでるにもかかわらず全然違うんです。

 最初の人は、爽やかなフルーティーな感じだったんですが、最後の方になってくるとタンニンの香りがしますね。それを20人で最初の方にサーブされたワイン、真ん中の方でサーブされたワイン、最後の方にサーブされたワインというのをみんなで回して交換しながら飲んで、ワインの香りが変わっていくのを楽しんでましたね。

 

 参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・カロン・セギュール1966」を87点と評価しています。

このワインはどうにか命を長らえて入るが、危うい生である。愛らしく、十分な強さのある、西洋杉と熟した果実のブーケ。味わいは非常に満足いくもので、凝縮感も余韻の長さも良好。異論はあろうが、これは1960年代のカロン・セギュールでは最良のものである。

ロバート・パーカーボルドー第3版」より引用】

 

⑦シャトー・カロン・セギュールのエチケットは特徴的な「ハートマーク」

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カロン・セギュール エチケット

 特に女性陣は、やっぱハートのエチケットなので、すごい楽しみにしてたというか興奮してました(笑)

 でも、ハートマークのワインなんで、爽やかなイメージをされてたのかもしれないですけど、時間が経ってくると、しっかり強い渋みというか自分を主張してくる香りもあったり、そういう変化やギャップが面白かったです。

 

⑧シャトー・カロン・セギュールがきっかけで、人生どのように変わりましたか?

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人生を愉しむ!アイアンマンへのチャレンジ

 一つは、「52年もの熟成されたオールドヴィンテージワインを抜栓をした男だ」という、人生の基準ができました。ですので、他のワイン会があったり、ワインを飲む機会とかも自信を持ってワインを開けれるし、人に伝えることもできる。今までとは違う感覚でワインと対峙することができるようになりました。そして、それだけのものを抜栓できる人間になったということは、人生において他のこともできて当然だ!という一つ上のステージに上がったと感じる日常があります。

 

 もう一つは、以前に比べて、圧倒的に自分の人生を自分で考えたようにコントロールしているという感覚があります。今までの僕の中で印象的なワインが、シャトー・タルボ1985年なんです。これは抜栓を担当させて頂いたというのがありまして。その時は、シャトー・タルボ1985に完全に振り回されてる感じがありました。しかし今回は「シャトー・カロン・セギュール(Château Calon-Ségur)1966」という凄まじいワインでも、しっかりとコントロールしながら、「そんな表情も見せてくれますか?(笑)」という愉しみもありました。

 

⑨これまでの片岡さんにとってワインとは?

 ワインは、おしゃれな人がおしゃれな雰囲気で飲んでるのかなっていう感じです。そんな僕も飲んでませんでしたので。ワインと言えば赤と白しか知りませんでしたので。

 

⑩今の片岡さんにとって、ワインとは?

 ワインを愉しむことができるようになり、ワインで愉しみを作り出せる。例えば、ワイン会を開くこともそうですし、普段食事に行った時にワインを飲む時も、自分で意図を持って選び、この食事にはどういうのがあるべきなのかを考えて愉しませてくれるものになったという感じです。

 

⑪これからオールドヴィンテージワインを愉しむ方に一言

 オールドヴィンテージワインは、ワインを美味しい、不味いを評価するものではなく、愉しむべきものです。やっぱり抜栓から愉しみがしっかりあるので、お店で頼むとしてもソムリエの抜栓やサーブを見て、それを私はどう美味しく飲もうか?というスタンスで、ワインと向かい合うと愉しくなると思います。

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カロン・セギュール

 

●【最後に 】

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 インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。

 EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。

 メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。

 こちらの申し込みフォームにご登録いたただきますと『次回の開催案内』をメールにてご連絡させていただきます。

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