【私の人生を変えた一本のワインNo.26】シャトー・タルボ1989
- 私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
- 本日インタビューしたのは、この方
- ①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
- ②なぜ、「シャトー・タルボ1989」を選んだのでしょうか?
- ③どんな抜栓でしたか?
- ④どんな香りでしたか?
- ⑤一口目はどんな印象でしたか?
- ⑥シャトー・タルボ1989に出会って、人生がどのように変わりましたか?
- ⑦シャトー・タルボ1989に出会う前のグレース真由美さんに、とってワインとは?
- ⑧今のグレース真由美さんにとって、ワインとは?
- ⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
- ●【最後に 】
私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?
ではなく、、、
本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。
本日インタビューしたのは、この方
グレース・真由美さん(一社)日本ハートシェアリング協会:代表理事
在籍メンバー430名を超える EXPLORERS CLUB に所属。
①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
2019年7月、EXPLORERS CLUB福岡地区主催のワイン会で飲んだ『シャトー・タルボ1989』30年前のワインです。その様子はこちらを御覧ください。
※シャトー・タルボ(Chateau Talbot)とは?
シャトー・タルボ(Chateau Talbot)は、凝縮しつつもなめらかなスタイルは、まさにボルドーワインの優雅さと偉大さの典型。
所有するブドウ畑の面積は「107ha(ヘクタール)」と、メドック地区でも2番目の大きさを誇っている。タルボはボルドーでは唯一、手摘みで収穫されたブドウを、余分な水分を飛ばすために温風の出るトンネルをくぐらせる。元来ピーチなどのデリケートなフルーツに施されてきた手法である。
15世紀のイギリス統治時代にサン・ジュリアン一体をタルボ将軍が治めていた。タルボ将軍はイギリスの歴史の中でも名将として有名で、シェイクスピアの「ヘンリー6世」にも出て来る、英国人にとっては歴史上の英雄です。
これが名前の由来で、1453年にカスティヨンの戦いで敗れた、イギリス人のギィエンヌ総督、英軍指揮官タルボ将軍、シュルベリー伯爵にちなんだもの。
※1989年(平成元年)の出来事
日本の内閣総理大臣は、自由民主党の竹下登氏 → 宇野宗佑氏 → 海部俊樹氏で、1年に3内閣が変わる『平成』波乱の幕開け。
昭和天皇崩御、昭和から平成に。東西冷戦の象徴「ベルリンの壁」が崩壊し、28年間にわたる東西分断の歴史が終結。任天堂が「ゲームボーイ」発売し、世界中でテトリスが大ヒット。ソウル・オリンピック開催。
②なぜ、「シャトー・タルボ1989」を選んだのでしょうか?
7月15日に、オールドヴィンテージワイン会が開催されていて、その時のワインが「シャトー・タルボ1989」でした。参加するために、ワインのことについて一つ情報を持ち寄るようになっていて、ワインについて、いろいろ調べることが初めてでした。
それでワインの歴史を調べたり、地域を調べたりすることは勿論なんですが、そのシャトー・タルボという名前が「タルボ将軍」という人の名前がついていることに、とても興味を引きました。
このシャトー・タルボは、フランスのサンジェリアン村で作られているんですが、その時代はイギリスが統治していてイギリス史にとって英雄と言える人物が「タルボ将軍」だったんのです。祝杯をする時や戦いに行って勝利を得るための験担ぎで飲んでると聞いて、「どんな味なんだろう?」と興味がわきました 。
そして、ヴィンテージワインというのが、その地域の当たり年に作られたもので熟成度合を見定めて飲むものだと書いてあったので、調べたら1989年のものが「今飲み頃です」と書かれてたんです。
それもあって当日まで待ち遠しくて、もう既にタルボ将軍を知ってるようなイメージで、まだ会ったことのないワクワク感とどんな味わいなんだろう?という期待度が高く、こんなにワインを飲みたい!!と待ち遠しく思えたワインが初めでした。
祝杯の時や勝利を掴みにいくんだ!っと言って飲んでいる、その時代のことを思い浮かべたりするのもすごく愉しかったです。だから飲む前からそのワインを愉しむということを味わせてもらったワインです。
③どんな抜栓でしたか?
今までワインをレストランで飲んだりする時には簡単にコルクは開くじゃないですか?
30年の物のワインコルクを開けていくのに、抜栓がこんなに時間がかかるものだと知らず、そのヴィンテージ物のワインが30年の時間を経て、とても崩れやすい物だというのを初めて知りました。
そして柴田さんが、ゆっくり1ミリづつ抜栓をされながらワインに心を合わせていらして、自分の心と向かい合っている姿がなんとも美しくて、男性が美しいと思ったのが初めてです。こんなに真剣な顔でコルクと向かい合うのかと、その姿がすごく美しかったです。
抜栓中に、コルクが途中半分で折れてしまったんですけど、折れてからの柴田さんが更に慎重に細心の注意を払ってゆっくり微妙に力を入れていくという姿もそうでしたし、割れたことによってほんのりフルーティな香りが、私のとこに届いた時に全身がその香りに包まれた感じで、私の五感がすごく研ぎ澄まされました。
息を飲んで開くのを見守るというのも生涯初めての事でした。引き込まれていくというのが正しい言葉かもしれないです。柴田さんとワインとの相思相愛になるのを私たちが見守っていくような、それを固唾を呑んで無事に開いてほしいと祈っている私を含め集まった参加者達の一体感も美しい瞬間でした。
④どんな香りでしたか?
私が感じた香りは、マスカットのようなフルーティな香りだったんですよね。
だから甘い香りがしたので甘い味なのかなって思ったんです。ただそのタルボ将軍が私のイメージにはあったので、それを覆された衝撃もありました。
タルボ将軍のイメージではありませんでした。7月の初夏の香りのような爽やかな甘いフルーツの香りだったので、それをイメージすると味もそういう雰囲気を感じられるじゃないですか。これを勝利の祝杯の験担ぎで飲んだという、とても印象がフレッシュな感じだったので、そのギャップがまた面白かったです。
⑤一口目はどんな印象でしたか?
まず、フルーティなイメージで甘いものなんだろうな?と思い、口に含んだ瞬間に煙草の香りみたいなスモーキーな香りがしたんです。
「甘い」と思ってたのがすごく重圧感があり、口に含んだら苦かったんです。強烈なパンチというか、初対面の淑女に「簡単にあなたを受け入れないわよ」という雰囲気を感じました。最初に香った時のような爽やかな優しい女性ではなく、もっと厳格な佇まいの淑女が現れて「あなたに何が分かるの?」と背筋を正され直ぐに懐に入れてくれないような感じがしました。
一口目の直ぐには受け入れてもらえない感覚から、二口目、三口目と味わっていくと、今度はまろやかで優しい雰囲気の芳醇な女性が現れた感じを持ちました。心が打ち解けて安心して、その女性に耳を傾けながら人生の機微を教えてもらっているような、ゆっくり海に沈んでいく夕日を眺めながら一緒にグラスを傾けてる感じがしたんです。
参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・タルボ1989」を88点と評価しています。
1989年はよりエレガントだが、1988年物にはある、ハーブのような、肉付きのよい、なめし革のようなアロマはまったくない、非常に濃くて黒っぽいルビー色で、黒い色の果実とスパイスのはっきりとしたブーケがあり、ミディアムボディからフルボディで、口に含むと官能的で、フィニッシュもすばらしい。
この1989年のタルボは最初の10年間、おいしく飲むことができるし、20年までは持ちこたえるであろう。
⑥シャトー・タルボ1989に出会って、人生がどのように変わりましたか?
私にとってすごく衝撃的だったのは、ワインで人生を重ねた人のイメージが出てきたことってないんです。ヴィンテージワインは、人生を重ねた大切な人に巡り会える瞬間を味わうものなんだと思いました。
その出会いが私にとっては、その想像を遥かに超えた世界が広がっていたので、初めてワインと真摯に向かい合った感じでした。ここがワインに対する私の人生の世界観が変わった瞬間です。
⑦シャトー・タルボ1989に出会う前のグレース真由美さんに、とってワインとは?
まず食事と共に楽しむもので、口当たりの良いワインが好きだったんです。なので、毎年、ボジョレーヌーボーを楽しみにしていました。
食事に合うものを頼むこと、ボジョレーを楽しむというのもそうですし、ワインの知識は男性の教養であるもので、男性がパーティや食事の時に年代やワインの熟成度など、お料理と上手に合わせることが男性の深みや腕の見せ所だと思ってたんです。
なので男性が選んだワインを美味しく頂くのが女性の役割だと思っていました。
⑧今のグレース真由美さんにとって、ワインとは?
新しい出会いや喜びを与えてくれる宝物です。
ワインをソムリエの方が抜栓して開ける所を見ていますが、初めてオールドヴィンテージワインを柴田さんが抜栓する際、本当に大切な人を扱うように扱っているのを見て、あれだけ丁寧に大切に扱われているワインを初めて見ました。
私とは違う時間の中で重ねてきた年月がワインにもあり、重ねてきた年月を出会った瞬間に新しく出会っていく。
そして、その人がどんな人なのか?、どういう顔をしているのか?どんなヒストリーを持っているのか?を人に会う前に事前に調べて興味を持つのと同じように、ワインと出会うために準備をするという愉しさ、丁寧に大切に扱っていく愉しさ、そして口に含む度に、今までとは異なる感性や感覚の別世界に連れていってくれる宝物なんですよね。
それは、一人で愉しむものではなく、それを一緒に愉しむ仲間がいて、その人生の大切な1ページを一緒に過ごす、美しい時間が私の人生に刻まれていく感覚なんです。
だからヴィンテージワインは一人でボトルを開けて愉しむものではなく、その時間も集う仲間と一緒に過ごした宝物になっていきます。わざわざそこのワインを作ってる「シャトー( Chateau)」や「ドメーヌ(Domaine)」にも行きたいと思ってしまうのです。
私がヴィンテージワインを1本味わっただけで、「シャトーを尋ねて行こう」だなんて、今まで絶対思いませんでした。あなたの生まれた場所に行きたいって思うと、また、そこに出向くと出会う人たちがいて、私の人生の宝物がまた増える。どんどん豊かな美しい時間を私にギフトされてる感じがしたんです。
⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
食事をしてワインを愉しむことも人生を豊かにするけれども、ぜひオールドヴィンテージワインを集う仲間と一緒に飲むという愉しみ方も知って頂きたいです。このオールドヴィンテージワインをみんなで飲む良いところは、その美しく重ねた時間をみんなで敬って大切な人として扱うところ。
そして、それぞれが味わった世界観を共有できる、今まで味わったことのない時間を過ごすことができます。
あなたに、是非オールドヴィンテージワインから豊かな時間を共有する人生を持って頂きたいです。その1本のワインから味わった世界観は、今度は一生忘れられない宝物になります。
「インタビュアー 山下裕司:WRITING 落合 予示亜・山下裕司」
●【最後に 】
インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。
EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。
メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。
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