死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン

【 時代を越えて受け継がれるオールドヴィンテージワインを飲んだ方々の体験談をご紹介しています 】

【私の人生を変えた一本のワインNo.27】ロマネ・コンティ2010

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ロマネ・コンティ2010】

私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン

 この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。 

  突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?

 ではなく、、、

 本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。

 本日インタビューしたのは、この方

飯田 啓之さん(会社経営)

株式会社ムロドー 代表取締役CEO。

在籍メンバー430名を超えるEXPLORERS CLUB男子部 部長。世界最高峰の舞踏会 モナコ公室主催『薔薇の舞踏会』3年連続出席。

 

①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?

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ROMANEE-CONTI2010

ロマネ・コンティ(Romanée-conti)2010です。

ロマネ・コンティ(Romanée-conti)とは?
  • 【産地】フランス/ブルゴーニュ/コート・ド・ニュイ/ヴォーヌ・ロマネ
  • 【格付け】グラン・クリュ(特級格付け)

 世界でもっとも高級なワインとして知られ「宝石」とも表現されるロマネ・コンティ(Romanée-conti)。ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村という産地にある、約1.8ヘクタールのグラン・クリュ(特級格付け)のピノ・ノワール種のブドウ畑からつくられる。畑も狭いことから、生産本数は4,000本〜6,000本程度。

 ロマネ・コンティとは、世界で最高のワイン製造業者と言われるDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ)社が所有するワインの名前でもあり畑の名前でもある。16世紀頃までは「クルー・デ・サンク・ジュルノー」という名で呼ばれていた、と言われている。

 2014年のサザビーズのオークションでは、ロマネ・コンティ119本が1.8億円のワイン市場最高価格で落札された。

ロマネ・コンティ(Romanée-conti)を飲む意味

 ロマネ・コンティ(Romanée-conti)を飲む。それは、奇跡の土地に顕れた自然の神秘と、その誉れを表現すべく歴史を重ねてきた人間の行為の崇高さを、みずからの内に取り込んで、霊的な人格を向上させようとする行為である。そこに意味を見出すことで、人は偉大なワインを飲む資格を得る。

 自分自身が飲むに値する人間かどうかを問う必要はない。むしろ、自らが未熟だから飲むのだ。迷える一人の人間に過ぎないから飲むのだ。飲むことで、何であるべきか、何をなすべきか、啓示が与えられる。生きるための力と、生きる意味が与えられる。

 ロマネ・コンティは、ワインなる特別な飲み物の特別な理由を、何より明確にする。

ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの世界(著:ワイナート編集部):84Pより引用」

※2010年(平成22年)の出来事

 

②なぜ、「ロマネ・コンティ2010」を選んだのでしょうか?

 「ワインの最高峰を知った」ということで選びました。最高峰というのは、車でいうとロールス・ロイス。ワインだとロマネ・コンティですね。

 それまで、フランス産のワインを中心に数多くのヴィンテージを勉強させてもらいましたが、やっとここまで辿り着いたか。という感じがします。

 

③どこでロマネ・コンティを飲まれたのですか? 

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「ル・ムーリス(Le Meurice)」

 パリにある「ル・ムーリス・アラン・デュカス(Restaurant le Meurice Alain Ducasse)」というガストロノミックレストランでした。ここは、フランス政府が国内でたった13軒だけに許した称号「パラス」を持つ、5ツ星の上に格付けされる最高級ホテルであり、フランス料理の巨匠といわれるアラン・デュカス氏がプロデュースするレストランです。

 その時のソムリエの反応がすごく印象に残っています。ロマネ・コンティをオーダーしたら、ソムリエが「え??ロ、ロマネ・コンティですか!!??」という表情になり、すごく戸惑いながらも喜び、「しょ、少々お待ちください!!」という感じ。

 それで、すぐに裏に行って、たぶん上司に相談して「じゃあ、このロマネ・コンティで勝負してこい!!」と背中を押されて出てきたと思うんです。

 

④どんな抜栓でしたか?

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EXPLORERS CLUB ファウンダーKATO氏とソムリエ

 ロマネ・コンティの抜栓は、レストランのソムリエが行ってくれました。抜栓自体は、2010年という比較的若いヴィンテージワインですから、コルクはすんなり開きました。

 僕も今まで、ボルドー五大シャトーなど数多くのオールドヴィンテージワインを飲んできて、年代物のワインの抜栓の難しさというものを体験しましたので、抜栓の難しさは知っています。僕自身もシャトー・マルゴー1967を抜栓したことがありますし、同席した人も古いヴィンテージの抜栓を経験しています。そのようなメンバーが揃うテーブルから向けられた熱視線は、ソムリエにとって、かなりプレッシャーになってたのではないでしょうか?(笑)

 パリの最高級ホテルのレストランのソムリエといえど、ロマネ・コンティを抜栓する機会なんてそうありませんからね。抜栓後、香りの確認でみんなでコルクを回してたら、すごく羨ましそうに見てたので、「どうぞ」とコルクを渡したら、すっごく喜んでくれましたね。

 

ロマネ・コンティ。どんな印象でしたか?

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「キリストの血」だと感じたロマネ・コンティ2010

 フランス料理の巨匠「アラン・デュカス」のレストランは、ヴェルサイユ宮殿の「サロンドパレ」を再現したといわれる、100席くらいある広いレストランで、その空間にはいろんな料理の香りが漂っていました。が、ロマネ・コンティを抜栓した瞬間、その香りは圧倒的な存在感でした。

 僕は、ロマネ・コンティ2010を一口、口に含んだとき「これはキリストの血だ」と思ったんです。キリスト教ではワインはキリストの血と考えられているほどのもので、普遍的なもの、世界中の人が愛するもの。今まで、いろんなワインを飲んできましたが、ワインって「美味しいものを飲んでる」って感じだったんです。

 でも、このロマネ・コンティを口に含んだ瞬間、今までのワインでは感じることができなかった「キリストの血」が全身のあらゆる毛細血管までを通って、全身細胞に届いた感覚があったんです。

これがキリストの血なのかと。その意味が理解できました。

 

ロマネ・コンティの畑にも寄られたんですよね?

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ロマネ・コンティのグラン・クリュ畑

 実は、このレストラン「ル・ムーリス(Le Meurice)」に行く前、車でフランス東部のブルゴーニュ地方にあるロマネ・コンティの畑に寄ったんです。世界でもっとも高価なワインを生み出す宝石とまで言われる「ロマネ・コンティ」の畑です。

 その畑は、グラン・クリュ畑(特級畑)と呼ばれ、たった1.8ヘクタール(100m強×100m強ほど)しかない狭い畑なんです。そこは、山の斜面に畑みたいに区画になってるんですが、ロマネ・コンティの畑だけ ”土の質” が全然違うんです。

 その土は、触るとすごい粘土質で、軽く握るとすぐ丸まるほど。すぐ横2mの隣にある畑に行って同じように土を握っても質が違うんです。やっぱりロマネ・コンティの畑だけ特別なんです。

 

 そして、ロマネ・コンティ2010年というヴィンテージは、ブルゴーニュの当たり年。ただロマネ・コンティにしては、ちょっと若く開いたという感じでした。それも飲んだのが2015年だったから、ちょっと早かったかなと。やっぱりロマネ・コンティは30年くらい熟成させて飲むのがいいんですけどね。それでも2010年はすごく評価も高いですね。

 

⑦一口目は、どんな印象でしたか?

 香りは気体ですよね。そしてワインは液体ですよね。気体である香りと、液体であるワインが一体化している不思議な感覚でした。抜栓した瞬間に、香りも液体感を持って体に入ってくる感じで、一口含んだとき、液体にも気体感があって”フワ〜”っとその空間の全てを圧倒的な存在感で独占しているんです。

 だから口に含むよりも前に、抜栓してコルクが開いてグラスにサーブされた瞬間から、もう飲んでいる感じなのです。そして、グラスに入っている上半分は気体を飲み、下半分は液体を飲んでいるという不思議な感じでした。とにかくあれは美味しかった。

 

⑧どのような料理と合わせたのですか?

 実は、料理は覚えてないんです。ロマネ・コンティは美味しかったんですが、料理に対してワインが勝ちすぎていた印象です。これは後日談ですが、その場に居合わせた殆どの人は、その時の料理を覚えてなくて。やはりロマネ・コンティが勝ちすぎてワインの印象しか残ってなかったんです。

 

ロマネ・コンティを飲んで、人生どのように変わりましたか?

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人生が変わったと実感した「薔薇の舞踏会2018」

 その時は、まだ人生変わったかは分かってなくて、なんかすごいワイン飲んじゃったぐらいの感覚だったんです。

 その時の僕の知識と思考レベルでは、ロマネ・コンティが世界最高峰のワインだということは知っていました。EXPLORERS CLUB のファウンダーであるKATO氏からも「最高のものを知れ」というのも教わって知っていた。ロマネ・コンティの畑にも行った。実際にワインを飲んで美味しかった。でもその時は、まだ人生が変わった感はなかったんです。

 

 自分の中で人生変わったと実感できたのが、2018年のモナコ公室主催のチャリティガラ「薔薇の舞踏会(Bal de la Rose)」のエンターテイメントの間に行われたトンボラ(Tombola)で、一位の賞品を当選させたときでした。

 この「薔薇の舞踏会(Bal de la Rose)」というのは、グレース公妃が1954年に設立して以来、毎年3月に、スポルティングモンテカルロ のSalle des Etoiles(サル•デ•ゼトワール)で開催される、大規模なチャリティ・ガラです。収益はプリンセス・グレース財団に寄付されます。

 その頃くらいからですね。「薔薇の舞踏会で一位を獲った男」として生きなければならないと思うようになり、ワインでいえば最高峰を飲んだ人間として生きなければならない、となったのは。本当の意味で、ロマネ・コンティを消化するまでに、二年かかったように思います。

 

ロマネ・コンティに出会う前の飯田さんにとってワインとは?

 僕は、お酒は大好きなんです。「神の雫講談社)」や「島耕作講談社)」などの漫画も読んでいたので、ワインは極めたら面白いというのは、もちろん知っていました。

 ただ、僕はワインというよりスコッチ派だったんです。仲良くなったバーテンダーから、スコッチのヴィンテージの違いや樽の違いとか、よく教えてもらってましたし「これ市場に出てないんだよ、特別に飲ましてやるよ」みたいなスコッチが、美味しいんですよ。

 だから、そういう意味では、ワインもそういう世界あるんだろうというのは、すごく興味はあったんですけど、愉しむ機会をスコッチに奪われていました。

 

 それから、レストランのテーブルマナーやファッション、エスコートなど、プロトコールを学びはじめて、レストランで妻とも食事を一緒にする機会が増えるように。だんだんとワインを覚えていきますよね。

 そうやってワインを飲む機会を増やしていくうちに、ワインは食事とマリアージュしても美味しいし、ワインだけで飲んでも美味しい、懐の深い存在だなと気が付いてきたんです。そうするとワインに対する自信も出てきて、ワインの奥深さと魅力をどんどん知っていきました。

 

⑪今の飯田さんにとって、ワインとは?

 「可能性を広げてくれるもの」ですね。自分の人間の総合力が試されるみたいな感じです。ワインリストも含めて、男としてやらなければいけないことを広げてくれます。

ワインをカッコよく飲むっていうだけで、いろんなことを考えなければならないんです。

 まず、一緒に行く女性に喜んでもらえるレストランを選ばなければならない。そうなるとファッションや香水を選ばなければならない。女性に貸すハンカチも選ばなければならない。レストランでは、その日の気分や料理に合わせて、ワインリストからワインを選ばなければならない。やること満載になってくるわけです。だから、僕にとってワインは「可能性を広げてくれるもの」です。

 

⑫これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて

 ワインって、敷居高く感じますよね。知らないと恥ずかしいですし、知識が増えると奥深さが見えてくる。

 オールドヴィンテージという概念が分かると「このワインの命を俺が奪うんだ」という気持ちになるんです。ワインと同じように歴史を継承する遊びであるクラシックカーや古城などは、たとえ手放したとしても次のオーナーがいるので継承できるわけです。

 でも、オールドヴィンテージワインを飲むということは、何十年も熟成させてきたものを自分の体の中に入れてしまいます。そのワインを”殺す”ということなんです。

 

 初めての方には、とても敷居が高い話になってしまうのですが、ストレートに言うと「お命、いただきます」なんですよね。多くの人が丹精込めて作ったワインが、フランスから巡り巡って、日本の僕らの手元に来るわけです。

 オールドヴィンテージワインは、抜栓して空気に触れ始めるとワインは死んでいきます。表現が非常に難しいのですが「殺人をする覚悟で飲む」んです。そうすると「今日飲んだワインなんだっけ?」と、記憶にも残してあげたくなるし、エチケットとか写真撮って、事前事後に調べることもするわけです。

 

 だから、すごくシンプルにお伝えすると「ヴィンテージの古いワインを丁寧に飲む」ということですね。それが一番ワインを好きになる方法です。

 丁寧に飲むというのは、ワインのことを調べたり、香りをじっくり香ってあげたり。素敵な場所で、素敵な仲間と素敵なファッションに身をまとって飲むとか。やっぱりTシャツ・ジーンズで「お命、いただきます」という風にワインは飲めませんよね。

 

 やっぱりワインは、すごく不思議な飲みものだと思うんです。ウィスキーはBARカウンターで一人で飲むもの。でもヴィンテージの古いワインって、一人では飲まないですよね?だからワインは「会話を生むためのキリストの血」なんですよ。人との会話はワインとの会話ですね。

「インタビュアー:山下裕司 WRITING:落合予示亜」

 

 

●【最後に 】

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 インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。

 EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。

 メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。

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