【私の人生を変えた一本のワインNo.29】シャトー・マルゴー1975
- 私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
- 本日インタビューしたのは、この方
- ①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
- ②なぜ、「シャトー・マルゴー1975」を選んだのでしょうか?
- ③どんな抜栓だったんですか?
- ④コルクが抜けていく時の香りは、どうだったんですか?
- ⑤一口目は、どんな印象でしたか?
- ⑥シャトー・マルゴーを飲んで、人生がどのように変わりましたか?
- ⑦マルゴーに出会う前の中川さんにとってワインとは?
- ⑧今の吉右衛門さんにとって、ワインとは?
- ⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
- ●【最後に 】
私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?
ではなく、、、
本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。
本日インタビューしたのは、この方
中川 吉右衛門さん(農家)
山形県高畠町の『天然農法・自然栽培14代 中川吉右衛』。特定非営利活動法人『Fan土 earth JAPAN』代表理事。
在籍メンバー450名を超えるEXPLORERS CLUBの全国の地区を統括する地区統括であり、狩猟部長。
①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
EXPLORERS CLUB 東北 主催のワイン会で飲んだ『シャトー・マルゴー1975(Château Margaux)』です。
※シャトー・マルゴー(Château Margaux)とは?
シャトー・マルゴー(Château Margaux)は、格付け一級で、ボルドー五大シャトーのなかでもエレガントで最も女性的なワインと評され「ワインの女王」と呼ばれる。1855年の格付け当時から五大シャトーの先頭を争う高貴なワイン。
1810年に、フランスでは珍しい「メドックのヴェルサイユ宮殿」と称されるネオ・パラディアン様式の城をボルドーの建築家 ルイ・コンブが建設。
ルイ15世の愛妾デュ・バリー夫人、「レ・ミゼラブル」作者の小説家ヴィクトル・ユーゴー、アメリカ第3代大統領トーマス・ジェファーソン、イギリス初代首相ロバート・ウォルなど、各界の著名人に寵愛されていたワイン。
ノーベル賞を受賞した文豪ヘミングウェイは、あまりにもマルゴーを愛し過ぎて、その名を孫娘に「マーゴー(マルゴーの英語読み)」と付けた。その美しい名の孫娘は、映画女優にまでなった。
※1975年(昭和50年)の出来事
フランス・パリ郊外のランブイエ城で第一回サミット開催される。天皇が史上初めてアメリカ合衆国を公式訪問。山陽新幹線の岡山駅〜博多駅間開業。きのこの山(明治製菓)や黒ひげ危機一発(タカラトミー)、スティーブン・スピルバーグ監督の「ジョーズ」が大ヒット。
②なぜ、「シャトー・マルゴー1975」を選んだのでしょうか?
僕と年齢が一緒のヴィンテージであり、「これが、今からマダムとして生きようとする43歳のときの感じなのか!!」というレディース&ジェントルマンとしてのエレガンスを猛烈に感じたワインだからです。
これまでも、EXPLORERS CLUB 主催のワイン会で、
- 1968 Château Calon Segur(シャトー・カロン・セギュール)
- 1968 Château Petrus(シャトー・ペトリュス)
- 1959 Bollinger(ボランジェ)特別枠
- 1958 Château Lafite-Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)
- 1938 Château Lafite-Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)
- 1874 Château Lafite-Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)
- 1918 Château Latour(シャトー・ラトゥール)
- 1918 Château d’Yquem(シャトー・ディケム)
- 1811 Camus Napoleon Grandemarque Cognac(ナポレオン・グランコニャック)
総額5000万円の、これらウルトラ級の素晴らしいワインを飲みましたが、やっぱり仙台で開催したワイン会で飲んだ「シャトー・マルゴー1975」です。
③どんな抜栓だったんですか?
抜栓する前の段階で「あ、これヤベイな、、、」と思ったんです。抜栓する前にボトルの中身を見たら、赤ワインなのに、かなり透明感あるなと。しかし僕の直感ですが、このシャトー・マルゴーが「私、行けますよ!!」というオーラをめちゃくちゃ放っているのを感じたんです。
ただ、それと同時に、過去の経験や知識など過去ベースで「本当に飲めるのだろうか?無理なんじゃないか?」と、不安を感じる自分もいたんです。
そんな状態で抜栓したので、もうドキドキです。
しかし、このシャトー・マルゴーの抜栓は特別でした。マルゴーの底力に感動して涙が出そうになりました。1975年(44年もの)のヴィンテージなので、鉛になっているボトルのキャップシールをソムリエナイフで切り、パカっと開いた瞬間に、ものすごい香りがするんです。
キャップシールを外しただけなのに、もう「芳醇」という言葉を通り越し、ユリやカサブランカといった、純白で大輪の花が咲く、お花畑の中に連れて行かれたような。高貴な花の香りとエレガントを感じさせる甘い香りが、ブァア〜っと広がった瞬間に、感動して涙が出そうになりました。その場にいた全員の嗅覚を魅了されました。
「シャトー・マルゴー舐めんなよ!」と熱いメッセージを感じました。
キャップシール外す前に、シャトー・マルゴーが「私、行けますよ!!」というオーラを直感で感じていたのに、薄いワインの色を見て「飲めなかったらどうしよう、、、」とか、ホント余計なことを考えていましたね。
④コルクが抜けていく時の香りは、どうだったんですか?
抜栓は、コルクが途中で、ちぎれそうにはなったんですけど、コルクの状態は結構良かったので、15分くらいで抜栓できました。
抜栓でコルクが上がっていく度に、高貴な花の香りとエレガントを感じさせる甘い香りが、どんどん強くなっていき、さっきのお花畑にいる状態から、今度は「お花から蜜を抽出する香り」に変わってきて、もう蜂になったような感じです。
コルクが抜けるその一瞬で、その場にいる全員が一本のシャトー・タルボに引き込まれました。
⑤一口目は、どんな印象でしたか?
まずサーブしてボトルから出てきたワインの色は、明らかに赤ワインの色ではない。樽の中での熟成されたウイスキー(whisky)ロックをちょっと水で割ったような「琥珀色」でした。
はじめて口に含んだ瞬間、鼻から脳まで突き抜けるエレガントな香り。
そして、まろやかというよりもアルコール特有の”ピリッ”とした感覚がきた後、口の中の唾液と混ざり合って、マルゴーが僕の舌の上を、蓮の葉の上を転がる丸まった水滴のイメージで転がっていく。これ、良いオールドヴィンテージワイン特有の感覚なんです。
前回参加した総額5000万円のウルトラ級のオールドヴィンテージワインが並ぶワイン会でも、古いワインは絶対そういう感じがしました。唾液と混ざり合って、だんだんと甘い感じになり、そこから香りと混じり合って甘さとアルコールやタンニンなどがバーっときて。とにかく、もの凄く感動しました。
参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・マルゴー1975」を74点と評価しています。
エッジがかなり琥珀色がかっており、古い鞍革のような、土地臭くて埃っぽいノーズの1975年のマルゴーの出来には、いつもがっかりさせられてきた。酸度が高く、厳しい味わいで、熟成感と魅力に欠ける。
タンニンがきついのが、この凡庸なワインの失敗の原因である。これよりもまずい瓶を飲んだこともあるので、前もって注意せよ。
⑥シャトー・マルゴーを飲んで、人生がどのように変わりましたか?
ワインというものの歴史、奥深さ、重みというものを、もの凄く感じました。
もちろん、EXPLORERS CLUB主催のウルトラワイン会のときも歴史、奥深さ、重みを感じました。自分より年齢が全然上で、200歳のシャンパーニュや一番若くて50歳ぐらいのワインたち。もちろん美味しかったし、十分過ぎるほど歴史を感じた。でも僕の舌が、まだそこについて行けてなかったんです。
シャトー・マルゴー1975は、「これからまだまだ行けまっせ!」という感じだったんです。僕らが目指すレディース&ジェントルマンという生き方を感じました。レディースには「マダム」という生き方があります。世界中の大富豪が集まる国モナコ公国では、人生のすべてを愉しみ尽くしてきた80歳でいっぱしのマダム。
その基準で、このシャトー・マルゴー1975を見ると、「これが、今からマダムとして生きようとする43歳のときの感じなのか!!」と、ここ数年前にマダムという生き方をする!と覚悟を決めた43歳の女性の印象だったんです。43歳の僕が、ジェントルマンとして生きると覚悟を決めた、同じ歳のシャトー・マルゴー。すごく自分とリンクしました。
シャトー・マルゴー1975のマダムとしての覚悟。たとえ今が、どんな状態であったとしても、必ずそこからでもマダムとして生きる。その根底に流れているのがエレガンス。やはりワインの女王と呼ばれる「シャトー・マルゴー」でした。43歳でも女王は女王で、英国のエリザベス女王が、生まれたときからエリザベス女王だったように、ある年齢から突然女王として覚悟を持って生きてきたわけではなく、生まれたときから女王として生きてきたという感じをシャトー・マルゴーからも感じました。
そういう「覚悟」を、とても感じたワインでした。明確になったのは、ワインがお酒ではない。お酒ですらないということ。これは僕の中では、とても印象的なワインでしたし、このワインを飲んで人生変わりました。ワインの見方が完全に変わりましたので。
⑦マルゴーに出会う前の中川さんにとってワインとは?
洒落た飲み物です。でも、ほぼ飲んでなかったです。ワインには縁はあったのですが、お酒の中ではワインが苦手でした。ウイスキーと日本酒をよく飲んでいたので、ワインはあえて飲むものではありませんでした。ワインが美味しいと思ったことも無かったので。
⑧今の吉右衛門さんにとって、ワインとは?
無いと気持ち悪いものですね。そしてワインは、人間のべールだと思います。「ベールを纏う」とか「ベールに包まれている」というベールのことで、オールドヴィンテージワインが日常にあることで、普段、農家として命と向き合っている野性本能剥き出しの僕が、そのベールに包まれてエレガントさやジェントルマンシップを生み出すことができます。
僕のことをあまり知らない人の僕のイメージは、僕がビールか焼酎か日本酒を好んで飲むと思っています。農家だからというイメージがあるのだと思いますが。だから友人が家に来て、一緒にお酒を飲む時に、家ではワインがスっと出てくるので、農家の僕しか知らない人からすると、それでキュンとくるらしいです(笑)
⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
シンプルですが、とにかくワインを飲むことです。「なんとかこの女性と付き合いたい、、、」というときに、二人きりでロマンティックにワインを飲みましょう。
ロマンティックな環境にワインは最高です。ワインを愉しもうと思ったら、ロマンティックな環境を作ることと、自分がロマンティックになっていくことが絶対に必要なので、そのときに必ずワインを嗜んで頂きたいと思います。
素敵なオールドヴィンテージワインを買って、友達と一緒に飲むというのも愉しいとは思いますが、もっと愉しもうと思ったら、ロマンティックなシチュエーションや環境、そしてロマンティックな自分がいて、そこにワインを存在させてあげて欲しいです。
これからワインを愉しむという方は、絶対にワインが好きになると思います。そこから、自分の好きなワインを探し出すとか、オールドヴィンテージワインも愉しめると思います。
「インタビュアー:山下裕司 WRITING:上堀内弘樹」
●【最後に 】
インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。
EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。
メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。
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