【私の人生を変えた一本のワインNo.34】シャトー・タルボ1985
- 私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
- 本日インタビューしたのは、この方
- ①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
- ②なぜ、『シャトー・タルボー1985』を選んだのでしょうか?
- ③どんな抜栓だったんですか?
- ④どんな香りでしたか?
- ⑤一口目はどんな印象でしたか?
- ⑥シャトー・タルボ1985に出会い、人生がどう変わりましたか?
- ⑦シャトー・タルボに出会う前の長谷川さんに、とってワインとは?
- ⑧今の長谷川さんにとって「シャトー・タルボ1985」とは?
- ⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
- ●【最後に 】
私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?
ではなく、、、
本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。
本日インタビューしたのは、この方
長谷川 泰彦さん(経営コンサルタント)
中小企業診断士であり、大手機械メーカー、航空機部品メーカーなどのコンサルティング実績あり。狩猟免許、船舶一級免許、大型一種免許、牽引自動車、大型二種免許を保有し、観光バスの運転やクルーザーやディンギーヨットにも乗る。ワルツを踊るギタリスト。
①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
2020年3月、EXPLORERS CLUB主催のワイン会で飲んだ『シャトー・タルボ1985 』35年前のワインです。
※シャトー・タルボ(Chateau Talbot)とは?
シャトー・タルボ(Chateau Talbot)は、凝縮しつつもなめらかなスタイルは、まさにボルドーワインの優雅さと偉大さの典型。
所有するブドウ畑の面積は「107ha(ヘクタール)」と、メドック地区でも2番目の大きさを誇っている。タルボはボルドーでは唯一、手摘みで収穫されたブドウを、余分な水分を飛ばすために温風の出るトンネルをくぐらせる。元来ピーチなどのデリケートなフルーツに施されてきた手法である。
15世紀のイギリス統治時代にサン・ジュリアン一体をタルボ将軍が治めていた。タルボ将軍はイギリスの歴史の中でも名将として有名で、シェイクスピアの「ヘンリー6世」にも出て来る、英国人にとっては歴史上の英雄です。
これが名前の由来で、1453年にカスティヨンの戦いで敗れた、イギリス人のギィエンヌ総督、英軍指揮官タルボ将軍、シュルベリー伯爵にちなんだもの。
※1985年(昭和60年)の出来事
男女雇用機会均等法が成立。群馬県の御巣鷹の尾根に墜落した『日航ジャンボ機墜落事故』もこの年。初の日本人宇宙飛行士誕生し、携帯電話の先駆けとなるショルダーフォン(NTT)も登場。
ファミコン用ソフト『任天堂スーパーマリオブラザーズ』が発売され空前の大ヒット。ヒット曲はチェッカーズの『ジュリアに傷心』で、映画では『ゴーストバスターズ』がランキングNo.1になっている。
②なぜ、『シャトー・タルボー1985』を選んだのでしょうか?
今回、初めて参加した EXPLORERS CLUB が主催するワイン会は、一本のワインを10余名で愉しみ、知識や感想を共有し学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。
私にとって、人生で初めてのオールドヴィンテージワイン会でしたし、初めての抜栓を通して、今の「自分を活写する姿見」と感じました。今の自分をそのまま映し出してくれます。そして、これから人生の大一番の戦いに挑む、私の背中を押してくれるワインだからです。
③どんな抜栓だったんですか?
まずキャップシールを外して35年もののワインのコルクを見ると、表面が黒白っぽくカビが生えた感じで、コルク自体に粘つきがあり、コルクがボトルにしっかりへばり付いているという状態でした。
カビをソムリエナイフで、綺麗にこそぎ落として、スクリューの先端をコルクの真ん中に差し込んで、ゆっくり回り回し進めていきました。
新しいワインのコルクには無い粘りを感じ、コルクの状態を把握するため、その感触を確かめながらスクリューをゆっくり差し進め、コルクの最下面より上3mmくらいまでスクリュー先端を差し込みました。
そして、スクリューを通した手の感触で確認しながら、1mmずつゆっくりコルクの状態を引き上げていくのですが、下から2cmのところで、コルクが引き千切れてしまったんです。
正確には、私のスクリューを引き上げるスピードが早すぎて、そのスピードに対するボトルの抵抗にコルクが耐えきれず、千切ってしまったんです。
残った2cmのコルクを引き抜きに、スクリューを差し込もうとした瞬間、内圧でコルクがグッと下がったり、もう抜けるという瞬間にコルクの一部をボトルの中に落としてしまったり。抜栓する上でコルクが落ちないようにすることは、最も注意しなければならないことなんですが。
人生の全てのことに対して、丁寧ではなかったことを痛烈に思い知りましたし、シャトー・タルボ1985と慇懃を重ねることもできていませんでした。抜栓の直前まではワインと対話できていたのですが、「抜ける!」と思った瞬間に心が離れたんだと思います。コルクとの対話が十分でなかった結果です。
④どんな香りでしたか?
抜栓している時、コルクが少〜しずつ抜けていく度に、ジワジワと芳醇で豊かな、とても華やかな香りがしました。その甘いフルーティなタルボの香りは、ワインの近くから順々に「あ〜素敵な香り!」と時間差で、溶溶漾漾と広がっていきました。その香りの広がり方はとても心地よく、会場全体を優しく包み込んでくれました。
⑤一口目はどんな印象でしたか?
サーブしてグラスから発する香りは、抜栓している時のフルーツの豊潤な香りではなく、鉄っぽさを感じさせる鉱物の香りの固いイメージ。そして口に含んだ一口目は、渋柿を食べた後のような、渋みで舌がツヤ消しになる感じという印象です。個人的には、この渋い感じのタルボが大好きです。
参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・タルボ1985」を89点と評価しています。
1985年のタルボは1982年ものを小型にしたようなワインであり、現在、飲むのにはうってつけである。色は非常に深みがあり、熟した、豊かなベリーのような香りがあり、しなやかで肉付きがよく、ミディアムボディである。たっぷりとした果実味があり、フィニッシュはなめらかで優雅で、すばらしくバランスがよい。
⑥シャトー・タルボ1985に出会い、人生がどう変わりましたか?
以前、EXPLORERS CLUB ファウンダーのKATO氏より、「オールドヴィンテージワインの抜栓は、生き方が現れる」と教えて頂きました。
まさに、このシャトー・タルボ1985は、それを教えてくれたワインでした。決めなければいけない抜栓を決められなかった。まだまだ自分が弱いことを痛感しました。これは、普段の日常から変えていかないと、何回抜栓にチャレンジしても同じことだと思います。完璧に丁寧に最後までやりきる!という志を改めて持って生きます。
ただ、今回の抜栓で、オールドヴィンテージワインの抜栓が大好きなんだと気が付くことができました。抜栓するまでリトライしていく、そのプロセスが愉しくて。その状況に応じて、あらゆる判断をしながら抜栓していく作業は、たまらなく好きですね。
⑦シャトー・タルボに出会う前の長谷川さんに、とってワインとは?
昔は、お酒をよく飲んでいましたが、ワインと関わることは、ほとんどありませんでした。気が向いたときだけ、居酒屋でグラスの赤ワインを「渋いな〜」と思いながら飲んでました。
⑧今の長谷川さんにとって「シャトー・タルボ1985」とは?
この「シャトー・タルボ」は言わずと知れた英雄ジョン・タルボット、いわゆるタルボ将軍に由来するワインで、勝利を祈願して飲まれるワインと言われています。勝利して飲むワインではなく、勝利を祈願するときに飲むワイン。ということは「明日は人生の大一番!」という日に飲むワインなんです。
今回のワイン会を通して感じたのは、シャトー・タルボ1985は「自分を活写する姿見」でした。人生の大一番という勝負の前日に、勝利を祈願するワインなのに、抜栓という勝負で負けて祈願できなかった感があります。こんな生き方をしていたら、そりゃ負けるなと。
だからこそ、「完璧に丁寧に最後までやりきる!」という生き方をするんだ!と猛烈に感じたワインです。
⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
ワインを愉しむなら、オールドヴィンテージワインをお勧めします。ワインの愉しみって、購入したオールドヴィンテージワインが、どういうプロセスを経て、自分の手元にやって来たのか?ということを想像するところから始まるじゃないですか。ぜひ、その時間を楽しんで頂きたいですね。
例えば、そのワインのワイナリーが、どこにあって、どんな環境で作られて、どんな人が作っているのか?また、僕は地理が好きなので、パリからボルドーまでの距離が「東京→富山間」くらいで、車では6時間くらいなんてこと調べるのです。なんか、こういうのを知ると、妙に親近感湧いてきません?こんなこと調べると愉しいですよ。飲む前にどれだけ愉しめるか?
それに今回飲んだ、シャトー・タルボ1985は、同じシャトーで作られていますが、同じ葡萄で作られていたとしても、保存状態も発送状況も一本一本違いますので、その個体は全く違うものになります。
人と一緒だと感じるんです。同じ年に生まれても、当然別の人間です。家族だとしても、全然違う人格になります。そういった個性があるところに魅力を感じます。だからこそ、最高に美味しく飲んであげるためには、そのワインのことを知りたいと思うんです。それが、オールドヴィンテージワインの愉しみ方かなと思います。
「インタビュアー WRITING:山下裕司」
●【最後に 】
インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。
EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。
メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。
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