【私の人生を変えた一本のワインNo.41】シャトー・ディケム1971
- 私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
- 本日インタビューしたのは、この方
- ①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
- ②なぜ「シャトー・ディケム1971」を選んだのでしょうか?
- ③シャトー・ディケム(Château d'Yquem)一口目の印象は?
- ④シャトー・ディケムを飲んで、人生がどのように変わりましたか?
- ⑤シャトー・ディケム1971と出会い、何か気付きはありましたか?
- ⑥シャトー・ディケムに出会う前は、ワインとはどんなものでしたか?
- ⑦今の下田さんにとって、ワインとは?
- ⑧これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
- ●【最後に 】
私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?
ではなく、、、
本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。
本日インタビューしたのは、この方
下田正太郎さん(俳優)
ハリウッドを目指す俳優。トロンボーン奏者。EXPLORERS CLUB 演劇部のメンバーとして、カンヌ国際映画祭パルムドール(短編部門)獲得に向け活動。2018年6月には、ディンギーヨットでロサンゼルスのカタリーナ海峡(34.8km)を8時間02分で横断達成。
●【出演作品】●
①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
2020年2月に EXPLORERS CLUB 主催で開催された「DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)ウルトラワイン会」で飲んだ、『シャトー・ディケム1971(Château d'Yquem)』49年前のワインです。※写真、右端のボトルがディケムです。
※シャトー・ディケム(Château d'Yquem)とは?
- 【産地】フランス/ボルドー/ソーテルヌ地区/ソーテルヌ
- 【格付け】1級特別級
世界の貴腐ワインの頂点に君臨する「シャトー・ディケム(Château d'Yquem)」。シャトー・ディケムは、葡萄の木一本からグラス一杯しか取れない「黄金の雫」といわれる、世界最高峰の極甘口の貴腐ワインの生産者です。ぶどうは粒単位で丹念に手作業で選別される。まさに「ボルドーの宝石」と言われるワイン。
数百年の歴史を誇るボルドーでも最も古いシャトーの一つである。素晴らしいヴィンテージのものは熟成に20年以上かかるとされ、100年以上経っても、その輝きは失われないといわれている。
1855年パリの万国博覧会の際、ジロンド県産白ワイン部門の格付けで、これを凌ぐものはない最高級品ということで唯一「特別1級」に指定されている。アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンに寵愛されていたワインと言われている。
※1971年(昭和46年)の出来事
②なぜ「シャトー・ディケム1971」を選んだのでしょうか?
このウルトラワイン会は、すざましいラインナップでした。ワインに詳しくない僕でも十分すぎるほど、その凄さが分かる、この世界最高のDRCラインナップでした。俳優として生きる上で「お前のこれからの生き方はこうだ!」と、指し示されたようなワインだったからこそ印象に残りました。以下が、ウルトラワイン会のラインナップです。
●【ウルトラワイン会9本のラインナップ】
- DOM PERIGNON 1952 Champagne(ドン・ペリニヨン)
- MEURSAULT COMTES LAFON Les Perrières 1970(ムルソー・コント・ラフォン・レ・ペリエール)
- DRC Romanée Conti 1969(ロマネ・コンティ)
- DRC Richebourg 1959(リシュブール)
- DRC La Tache 1972(ラ・ターシュ)
- DRC Grands Echezeaux 1972(グラン・エシェゾー)
- DRC Echezeaux 1967(エシェゾー)
- DRC Romanée Saint Vivant 1976(ロマネ・サン・ヴィヴァン)
- Château d’Yquem 1971(シャトー・ディケム)
③シャトー・ディケム(Château d'Yquem)一口目の印象は?
このシャトー・ディケム1971は、今回の「DRCウルトラワイン会」の全てのワインを準備してくださった EXPLORERS CLUB ファウンダーであるKATO氏の生まれ年のワイン。KATO氏ご自身が「このディケム1971は、THE KATO というワインだ」と仰っていたので、何としてでも飲みたいワインでした。
その一口目、、、。舌にある味を感じる器官「味蕾(みらい)」が、一気に開花するといいますか。読んで字の如く「蕾(つぼみ)」が一気に花開いたような、今まで感じたことがない濃厚で高貴な香りだったんです。もうディケムの色気と力強さに優しく包み込まれるような気持ちでした。
僕の舌も分かりやすいほどに、見事に反応していました。今まで繋がってなかった神経が新たに繋がった感覚です。
参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・ディケム1971」を91点と評価しています。
これは傑出したディケムだが、私がテイスティングした時の瓶のひどさが災いしてしまった。単に杜撰な貯蔵と取り扱いのせいであって欲しいと思う。
最高の瓶では、ブドウが熟したような、凝縮されたトロピカル・フルーツの果実味とボトリティス菌が豊富にある。フルボディで深みのある黄金色、スパイシーな、カラメルのような、トーストしてローストした、肥えた味わいを持つこの大柄で豊かなワインは、ディケムにしては早く成長する。
反論の余地がないほど傑出しているとはいえ、ディケムとして少し過大評価されているヴィンテージと言えるかもしれない。
④シャトー・ディケムを飲んで、人生がどのように変わりましたか?
このシャトー・ディケム1971は「人生の道標」となるものです。スパイ映画「007」のイギリス秘密情報部 (MI6) の工作員であるジェームズ・ボンド。俳優としての生き方として、僕がモデルとするべき人物です。ジェントルマンとして、プロトコールをベースとして生きている感が伝わります。女性に対するエスコートであり、男としての強さであったり。僕はそういう生き方をすると決めています。
特に日本の一般的な女性は、エスコートをされ慣れていません。そういう日本の中でエスコートする機会は、なかなか無いんですが、自分はハリウッドを目指す俳優ですから、会話の中でエスコートもできますよね。いつでも、どこでも、何でもできるということに気が付いたんです。それは、このディケムを通して自分の人生変わったと思います。
⑤シャトー・ディケム1971と出会い、何か気付きはありましたか?
シャトー・ディケムは、ボルドーの甘口白ワインで唯一の特別第1級であり、ホワイトハウスで迎賓用として出されている貴腐ワインの最高峰です。しかも1971年の葡萄は傑出した出来の年。僕はこのワインで「本物を認める」ということを学びました。
1972年に公開された映画史に残る名作「ゴッドファーザー」ってご存知ですよね?実は、映画製作が決まってから、ゴッドファーザーの原作小説がベストセラーとなり、注目度が一気に高まった映画なんです。
映画製作が決まって、突然、注目度の高い作品になったので、映画会社は、もともと決まっていたコッポラ監督を、すぐに監督降板させられるように、映画の撮影中に、ずっと代役となる監督が「横にいる」という状況で、彼を精神的に追い詰めながら撮影していました。だって、この当時のフランシス・フォード・コッポラ監督は、ヒット作もない全く無名の30歳の若手監督の一人でしかありませんでしたから。全く信用されていなかったんです。
そして同じように、そんな屈辱的な思いを味わいながら撮影していたのが、「お前誰なん?」っていう時代のブレイク前のアル・パチーノ。そのアル・パチーノをマイケルという主役に起用したのは、このコッポラ監督です。毎日のように映画会社の人間が現場にやってきて「この無名コンビを代役に代えろ」と圧力をかけてきたそうなんです。
想像するだけで胃の痛くなるような状況で、作品の最も重要なシーンの撮影を迎えます。それは人を殺した経験もないマイケル(アル・パチーノ)が、対立するマフィアのボスと悪徳警官をレストランで計画的に射殺する場面です。ここでついに「マイケルの自分の中に眠っていたマフィアの獰猛な血が目覚める!」という瞬間が訪れます。
マイケル(アル・パチーノ)が覚醒し、コルレオーネ・ファミリーのボスとなっていく。無名の監督と主役が作り上げたゴッドファーザは、アカデミー賞を獲得します。しかも1と2という本編と続編が、アカデミー賞を獲った映画作品は、このゴッド・ファーザーしかありません。
シャトー・ディケム1971という本物と出会い、今の僕は、そんなアル・パチーノのような状況を自ら掴みに行っています。社会常識などに惑わされることなく、有名・無名関係なく、これがいいと自分が感じたことを信じ、本物を認め学ぶことで、これから下田正太郎の「ビッグバン(爆発的膨張)」を起こしていきます。
⑥シャトー・ディケムに出会う前は、ワインとはどんなものでしたか?
正直、今までワイン嫌いでした。味が強いですし、一口、口に含むだけで「あっ、もうこれ無理無理、、、」みたいな感じでした。
⑦今の下田さんにとって、ワインとは?
僕の人生にワインが加わったことで、最初はシャンパンの泡1粒くらいだった俳優・エンターテイナーとしての志が、一瞬で太陽系以上の大きさに爆発するというか、僕にとっては、宇宙創生の「ビッグバン」と同じくらい衝撃的なことでした。
「ハリウッドで勝負する!」という僕の志は、ぼんやりとしたものではなく、それに繋がる「具体的な今日の目標・行動」として未来が明確に見えるようになりました。それは、すべてのものにストーリーがあるということを知ればこそです。
もともとは極小だった宇宙が、何らかの影響を受け、指数関数的な急膨張(インフレーション)を引き起こし、その際に放出された熱エネルギーで大爆発(ビッグバン)することで宇宙ができた。宇宙創生には、そんなストーリーがあります。
そんな138億年前に誕生した宇宙の中で、僕は「下田正太郎」として生まれ、親に育ててもらいながら、小学校・中学校・高校を卒業し、今は俳優・エンターテイナーとして生きています。そこにはハリウッド俳優というストーリーも付け加えられていきます。こうやって僕だけのストーリーがあるのと同じように、どんなワインにも葡萄の実がなり収穫され、ワインになり、誰かに飲まれる。という、そのワインだけのストーリーがあります。
スクリーンに出てメッセージを伝える俳優・エンターテイナーとして「どこを切り取り、何を伝えるのか?」ディテール(Detail)にこだわってストーリーを伝える。それは言葉や文字が無くても存在だけで価値を伝えられる。ワインから、そんな事を教わったと思います。
⑧これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
やっぱりワインは仲間と一緒に飲んで、「このワインは、どんな表現ができるかな?」という遊びをして頂きたいですね。ただ「美味しい!」という感想ではなく、何か違った表現をする遊びですね。ワインを100倍楽しめると思います。僕は、今回シャトー・ディケムを飲んで、自分がそのストーリーを作るということを踏まえて、周りの人に伝えていきたいと思います。
「インタビュアー 山下裕司:WRITING 落合予示亜」
●【最後に 】
インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。
EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。
メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。
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