- 私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
- 本日インタビューしたのは、この方
- ①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
- ②なぜ、「ラフィット・ロートシルト1874」を選んだのでしょうか?
- ③どんな抜栓だったんですか?
- ④シャトー・ラフィット1874の佇まいはどんな感じでしたか?
- ⑤どんな香りでしたか?
- ⑥一口目はどんな印象でしたか?
- ⑦ラフィット・ロートシルトを飲んで、人生がどのように変わりましたか?
- ⑧そのワインに出会う前のあなたにとって、ワインとは?
- ⑨今のあなたにとって、オールドヴィンテージワインとは?
- ⑩これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
- ●【最後に 】
私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?
ではなく、、、
本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。
本日インタビューしたのは、この方
羽山エリさん(ファッションコーディネーター・テーブルマナー講師)
モナコに本部がある慈善事業団体「アミチエ ソン フロンティエールインターナショナルジャポン」にてイベント部部長を務める。
モナコ公室主催の「薔薇の舞踏会」などヨーロッパの舞踏会に出席。東京で開催された舞踏会「Bal de Japon」でダンスや、サントリーホールではバイオリンを演奏を行う。
故グレース公妃の名を冠したモナコ公国随一の総合病院「プリンセス・グレース病院(Princess Grace Hospital Monaco)」で長男を出産。
①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
2018年2月、EXPLORERS CLUB 主催のウルトラワイン会で飲んだ『シャトー・ラフィット・ロートシルト1874』146年前のワインです。
※シャトー・ラフィット・ロートシルト(Château Lafite-Rothschild)とは?
- 【産地】フランス/ボルドー/メドック地区/ポイヤック
- 【格付け】1級
シャトー・ラフィット・ロートシルト(Château Lafite-Rothschild)は、メドック地区ポイヤック村にあるシャトー。ボルドー5大シャトー筆頭で、5大シャトーのなかで最も繊細なエレガンスを極め、ルイ15世と寵姫ポンパドゥール夫人が愛した「王のワイン」として有名。
18世紀にフランス宮廷でボルドーワインの真価を最初に認めさせたと言われ、1855年のパリ万国博覧会で行われたメドック公式格付けでは、第1級格付けの筆頭として最高評価を受けた。まぎれもなく世界最高峰の赤ワイン。
「ラフィットには魂があり、美しい魂があり、優しく、寛大です。ラフィットは地球を夢に変えます。ラフィットは調和であり、自然と人間の調和です。なぜなら、私たちの素晴らしいワイン生産者なしでは、何も行われないからです。」5代目オーナー:エリック・ド・ロスチャイルド男爵(HPより引用)
※1874年(明治7年)の出来事
内閣制度ができる前の時代。初代内閣総理大臣の伊藤博文が明治18年〜。
明治維新直後の日本。板垣退助らにより、国民によって選ばれた議員による国会設立を目指すために「民撰議院設立建白書」が政府に提出された。江戸幕府の崩壊で無政府状態にあった東京に東京警視庁が設置。
世界では、ドイツが統一され、ドイツ・オーストリア・ロシアの三国による対フランス同盟「三帝同盟」が締結された時代。
②なぜ、「ラフィット・ロートシルト1874」を選んだのでしょうか?
146年もの時を超えて私と出会い、まるでロマンチックなランデヴー(rendez‐vous)をしていたかのように私を選んでくれたこと。そして、一緒に過ごしてくれた時間が愉しくて印象的だったからです。
このシャトー・ラフィット・ロートシルト1874と出会い、美しい歳の重ね方ということを学びました。この『歳』という漢字は「戉(刃物の意味)」+「歩(時の流れ)」から成り立ち、刃物で穂を刈りとるまでの時間の流れを表したもの。種まきから収穫までの期間を表し、後に一年の意となったんです。美しい歳の重ね方というのは、あるべき姿を目指し、自分にも周りの人にも全てのものに、日々手をかけ愛情を注ぐということですよね。
生産したばかりの当時の姿とは少し変わったものの、146年経ってもパワフルで、最後の方に少し甘さが出てきたり、香りも変化していたり、空気に触れながらワイン自身もその変化を愉しんでいるような感じでした。
保管の良さも含め、日々手を掛け、愛情を注いでいるからこそ、一年に一本刻まれる年輪のように、146年分の奥行きのある変化が出てきているのだと思います。
③どんな抜栓だったんですか?
コルクの上部は、コルク樫の樹皮が炭化したように硬くコンクリートのよう。そのコルクを彫刻家が木を削るように、フランスの刃物の町として知られるティエールで作られたラギオールナイフ(Laguiole knife)で少しずつ丁寧にコルクを削っていきました。
ようやくスクリューが刺せる柔らかさが出てきたところで、ゆっくりとスクリュー差し込み、引き揚げていったのですが、コルクは上が硬く下は湿って柔らかそう。その硬さと柔らかさの境目のところで千切れてしまいました。
コルクの残り半分を落とさないよう、まるで外科医のようにピンセットを使って少しずつ掬い上げていきました。抜栓したコルクの下の方は意外と若々しく、湿っていて柔らかく弾力もあって10〜20年くらいしか経っていないような想像よりフレッシュな感じ。
④シャトー・ラフィット1874の佇まいはどんな感じでしたか?
とても凛とした男性的な強さを纏った「生き抜いてきた」という感じでした。エチケットは全部剥がれてるわけでもなくて少し茶色くなってたりして見えない部分はあったんですが、芯の強さというか凛々しさを感じました。エレガントというよりは男前な感じです。
上記の写真は「ウルトラワイン会」での一枚。EXPLORERS CLUB ファウンダーであるKATO氏がモナコにお持ちのワインセラーから持参された、錚々たるウルトラワインたちです。
- 1968 Château Calon Segur(シャトー・カロン・セギュール)
- 1968 Château Petrus(シャトー・ペトリュス)
- 1959 Bollinger(ボランジェ)特別枠
- 1958 Château Lafite-Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)
- 1938 Château Lafite-Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)
- 1874 Château Lafite-Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト)
- 1918 Château Latour(シャトー・ラトゥール)
- 1918 Château d’Yquem(シャトー・ディケム)
- 1811 Camus Napoleon Grandemarque Cognac(ナポレオン・グランコニャック)
⑤どんな香りでしたか?
抜栓の途中から香りが会場中に広がったという訳ではなく、抜栓したボトルから細かい霧のような、かすかな香り。注がれたグラスに鼻を近づけても鼻腔をくすぐって逃げていくような感じ。
こちらから歩み寄らないと気安く香りを感じせてもらえない。そんな香りのシャトー・ラフィット・ロートシルト1874でした。歩み寄り、グラスに少し鼻を近づけると時を重ねてきた独特の香り、芳醇な厚みのある香りを感じました。
フレッシュな花束を感じさせるのではなく、色が落ち着いたシルクのタペストリーのような優しい色合いを感じる香り。連想させるのは、フランスの「ル・ヴィスト家」の当主になったアントワーヌ2世が、1500年頃に結婚の記念として工房に発注したと言われる「貴婦人と一角獣」。
中世美術の最高傑作といわれた、このタペストリーのテントには、「À Mon Seul Désir(我が唯一の望みに)」と書かれたメッセージが。娘の結婚祝いに織らせたもので「愛」を意味すると言われています。
絵画でいうと、印象派を代表するフランスの画家「クロード・モネ(Claude Monet)」のように自然の中で輝く外光の美しく明るく柔らかい色というより、少しバロック期を代表するネーデルラント連邦共和国の画家「レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(Rembrandt Harmenszoon van Rijn)」に近い、スポットライトを当てたような光と影が創り出す明暗対比のような色合いのイメージです。
⑥一口目はどんな印象でしたか?
私は、シャトー・ラフィット・ロートシルトのボトルの上の方を頂きました。金色に赤が混じったようなワインとは思えないような薄い金赤色。
ワインの一口目、ワインということを知らない人が飲んだらワインって分からなかったかもしれません。柔らかくて、さら〜っと舌の上を颯爽と通り抜けていった感じ。舌の味覚を感じる気管である「味蕾(みらい)」が、ワインが通り過ぎた後に、追いかけていくような形で、舌の蕾(つぼみ)がどんどん開いていく感覚でした。
このシャトー・ラフィット・ロートシルト1874は、ワインとしっかり向き合って飲まないと捉えられない味がたくさんありました。私はワインを女性だと思っていますので、どのような人生を歩んできた女性なのか?と想いを張り巡らせて愉しみます。
60歳のワインなら、そのワインが60年間どんな環境で大事にされて生きてきたのか?作り手さんの想いや、生い立ちなど、一緒に飲む仲間たちと語り合いたいんです。146歳のシャトー・ラフィット・ロートシルトを迎えるにあたって、この女性は私に何を語りかけてくるんだろうと思いながら飲んでいました。
⑦ラフィット・ロートシルトを飲んで、人生がどのように変わりましたか?
グラスに注がれて、146年ぶりの空気を纏い、時間を重ねるごとに、その年輪分の存在を増していくラフィット。ワインがこんなにパワフルでエレガントに年月を重ねていることに衝撃を受けました。これが美しい歳の重ね方なんですね。
146歳も生きてきた女性ながらも、とてもパワフルだったんです。語りかけてくる強さっていうのがあって。でも私は勝手に「146歳の女性は老いている」というイメージを持っていたのかもしれません。歳を取れば老けていく。確かに肉体は衰えていくでしょうが、魂や志は大きく力強くなっていくものですよね。
そして、146年前に作られた「シャトー・ラフィット・ロートシルト1874」が、素敵な歳の重ね方をしてきたのは、同じように素敵な歳を重ねてきた「アマディアコルク」の存在があるからです。
ワインのコルクは、コルク樫の樹皮を剥いで収穫されます。コルクの寿命は150〜200年ですが、そのあいだコルク樫一本で平均16回あまりの樹皮が収穫できます。しかし、長期熟成のオールドヴィンテージワインの品質を維持できるワインコルクとして利用できるのは、30年以上経った3回目の収穫からです。若いコルク樹皮は使えません。長期熟成に耐えられないからです。
そんな上質な「アマディアコルク」と共に、この「シャトー・ラフィット・ロートシルト1874」は、146年間も熟成を重ねてきました。一人じゃないんですよね。仲間と共に生きてきたんですよね。
私もこういう女性になって「人生100年以上元気で愉しもう!」と決めました。そして、この素敵な出会いをいろんなシーンでいろんな人と愉しむ人生にします。家族や仲間と共に、このような美しい素敵な時間を作っていくと。
⑧そのワインに出会う前のあなたにとって、ワインとは?
今までは、私自身は絶対に安全な場所に立ち「あなたどんな感じなの?」と、上から目線で、味と香りを評価していました。シャトー・ラトゥール(Château Latour)やシャトー・ムートン・ロートシルト(Château mouton rothschild)など、パンチがあり、とても分かりやすい、良いワインを頂いてきました。
ですので、ワインと向き合って愉しんでるという感じではありませんでした。時を重ねたワインは、もっと儚いものかと思っていました。
⑨今のあなたにとって、オールドヴィンテージワインとは?
嬉しい時、悲しい時、どんな時も側にいて、美しい時間を作る時には一緒に過ごしたいですね。初夏なら初夏の日差しの中で愉しみたいワイン、冬は冬で暖炉の前で愉しみたいワインがあります。美しい自分の人生に欠かせないものです。
オールドヴィンテージワインのような、美しい時間を積み重ねた人生を私も歩みます。「シャトー・ラフィット・ロートシルト1874」は、しっかりと時間をかけて積み上げてきた美しさがありました。そんな素敵なオールドヴィンテージワインを愉しむ自分は、それに相応しい女性でないといけません。
ワインは、一人で飲んで愉しむものではないと思います。ワインを分かち合える仲間やパートナーと一緒に愉しみたいです。そして、やっぱり息子が20歳になったら、生まれ歳のヴィンテージを家族と共に、歳を重ねた分の年輪を振り返りながら、一緒に愉しみたいです。
⑩これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
やはり丁寧にワインに向き合うことではないでしょうか。それは、そのワインの歩んできた歴史を知ることだと思います。歴史を知ることで、抜栓する前からワインと愉しめます。
それに、マナーとしてワインをお出迎えするにあたり、そのワインに相応しいグラスで飲むことも大事です。ボルドーであればボルドーが美味しく飲める形のグラスで飲む。それは「価格が高い・安い」ではなく、そのワインを最も美味しい状態で飲むというのは、私たち飲む側の最低限のマナーですし、それが”ワインと愉しむ”ということでもあります。
グラスに注がれたサーブ後も、ゆっくり空気と混ざり合う時間も愉しむ。グイッと一気に飲むだけでなく、ワインのいろんな表情を見て欲しいですね。例えば、フレンチの前菜で頂いた白ワインを最後まで待ってみて、食後のデザートや果物と合わせて飲んでみるとか。時間が経つごとに変化していくワインの表情を見るのは愉しいですね。
最初は取っ付きにくかったけど、少し時間をおいたら、笑顔が出始めますしね。ちゃんと向き合うことで、ワインのいろいろな表情に気が付けます。
「インタビュアー 山下裕司:WRITING 落合 予示亜」
●【最後に 】
インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。
EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。
メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるヴィンテージワイン会を開催しています。
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