死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン

【 時代を越えて受け継がれるオールドヴィンテージワインを飲んだ方々の体験談をご紹介しています 】

【私の人生を変えた一本のワインNo.31】シャトー・オー・ブリオン1988

f:id:expc_fukuoka:20200531112611p:plain

【シャトー・オー・ブリオン1988】

私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン

 この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。 

  突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?

 ではなく、、、

 本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。

 本日インタビューしたのは、この方

入江 研爾さん(医師)

滋賀県草津市にある「入江産婦人科」 院長。

活動は、産婦人科医だけにとどまらず、OBCラジオ大阪 「ケンジーのYokaYokaよ〜」パーソナリティであり、fm GIG 高槻ステーション「 Fmgig夢かな 」パーナリティとしても活躍。

 

①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?

f:id:expc_fukuoka:20200307073531j:plain

シャトー・オー・ブリオン1988

シャトー・オー・ブリオン1988(Château Haut-Brion)です。 

※シャトー・オー・ブリオン(Château Haut-Brion)とは?
  • 【産地】フランス/ボルドー/グラーヴ地区
  • 【格付け】1級

ボルドー五大シャトーの中で唯一、グラーヴ地区から選ばれたオー・ブリオン(Château Haut-Brion)。 ポテンシャルが十分に発揮されるまでに長期熟成を要する伝統的な造り。五大シャトーの中で、「最もエレガントで香り高い」と評される最上級ワイン。

1855年メドック最高位の格付けに選ばれたシャトーで最古のテロワールを誇り、 ボルドーで最初に発酵槽にステンレスタンクを用いるなど、技術革新にも積極的なシャトー。

ナポレオン戦争に敗れたフランスの敗戦国の処遇を話し合うウイーン会議(1814年)において、フランスのタレーラン外相が連日に渡り各国の代表に豪華な料理とともにオー・ブリオンを振る舞い、フランスはほとんどの領土を失わずに済んだという逸話も。そこからフランスの救世主と言われるシャトー・オー・ブリオン。

※1988年(昭和63年)の出来事

日本の内閣総理大臣は、自由民主党の竹下 登氏。

世界最長のトンネル「青函トンネル」、世界最長の道路・鉄道併用橋の「瀬戸大橋」が開通。プロ野球 読売ジャイアンツの本拠地である東京ドームが完成。ソウル五輪、冬季カルガリー五輪が開催。ファミコンソフト「ドラゴンクエストIII」が社会現象になる。

 

②なぜ、「シャトー・オー・ブリオン1988」を選んだのでしょうか?

f:id:expc_fukuoka:20200307075904j:plain

シャトー・オー・ブリオンの抜栓

 私の属する『EXPLORERS CLUB』のワイン会で初めて出会いました。EXPLORERS CLUB が主催するワイン会は、一本のワインを10余名で愉しみ、知識や感想を共有し学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。

 私はワイン会初参加。何しろ下戸ですから、赤ワインは深酔いするイメージがあり、今まではもっぱら白のドイツワインでした。

 このシャトー・オー・ブリオン(Château Haut-Brion)のシャトーは、ボルドーの5大シャトーの中で、唯一メドック地区から離れている南側のペサックにあるグラーヴ地区にありながら、五大シャトーの中で、「最もエレガントで香り高い」と評されるナンバーワン的な存在なんです。ということは他のメドック地区のシャトーに勝ちを挑むというか、その挑戦的な姿勢が心に響いたという理由です。

 

 なんと言っても、フランスの救世主ともいわれるシャトー・オー・ブリオン。歴史を調べてみると、ナポレオン戦争で敗れ、国の崩壊という危機に追い込まれていたフランスの外相タレーランは、敗戦国の処遇を決める1814年の「ウィーン会議」で、連日連夜、各国代表に豪華な料理とオー・ブリオンを振る舞ったとされています。

 これによって、フランスは敗戦国でありながら領土をほとんど失うことなく乗り切ることができた。救世主と言われるワインなんて素敵じゃないですか。

 

③シャトー・オー・ブリオンのボトルに違いが

 通常ボトルの形状が、ボルドーは「いかり肩」、ブルゴーニュは「なで肩」じゃないですか。でも、このシャトー・オー・ブリオンは、このどちらでもないんですね。コレには驚きました。

 調べてみると、1958年ヴィンテージから古いディキャンターの形を模したボトルとの説とか、18世紀の初期のクラレットのボトルを踏襲しているとの説があります。ボトル形状が特異なので判別がしやすい形です。こんなボトルの形状は始めてみましたので、より強烈な印象が残りました。

 

④どんな抜栓だったんですか?

f:id:expc_fukuoka:20200307080213j:plain

シャトー・オー・ブリオンの抜栓後のコルク

 今回、初司会をされた、大阪地区の友人がしましたが、彼も初めてだったんです。ソムリエナイフを用いてキャップシールに切り目を入れて上手に剥がしました(鉛の成分が少し入っていたのか重たさがありました)。

 その後、螺旋部分を上手く挿していって中の方には入っていくんですが、抜き始めるとなかなかうまくいかず、今回困難であったのは、コルクが通常より長めであったこと、そして何よりも密着が強く硬かったことです。

 初めての友人もてこの原理をつい使ってしまうと、螺旋の向きに偏りが起こるため、できるだけ上腕・前腕の筋肉を薬指・小指にも均等に持たせるように上方向を保たせ努力されました。およそ10分くらいだったと思います。

 コルクを見ると、命を終えたワインの尊い亡骸と感じますね。オーブリオン1988の命を引き継ぎ生きてきます。

 

⑤どんな香りでしたか?

 キャップを取った時にコルクの表面が全然傷んでなく、カビも無かったので飲めるワインかなと期待感を持ちました。実際に抜けた後の香りもワイン独特の芳香な香りが漂い、私はワインから一番端の席でしたので、グラスに注がれたワインから、アロマを感じ取りました。

 初心者のイメージとしてのカベルネ・ソーヴィニヨンの芳香さとややマイルドな重厚感・コクを感じました。そう表現したのはたっぷりとした深い甘いアロマが漂ってきたからです。

 

⑥一口目はどんな印象でしたか?

f:id:expc_fukuoka:20200307082700j:plain

シャトー・オー・ブリオン1988のキャップ

 ところがなんです。最初の一口目は「えっ、何!?このフルーティーな軽さは?」そして「お花畑をちりばめたような味わい!」と感じました。フルーツのような花のような可憐さというかそういう味わいがしました。

 しばらく時間が経ってきますと、その味わいはコクのあるワイン独特の重厚感へ近づこうとしていました。もちろん、私が飲めない理由にもなった「重たい味のワイン」よりは、はるかに上品でしっかりとしたコクなので私にも一切嫌悪感は走りませんでした。

 そして、最後の「澱(オリ)」もいただくことができました。この歴史を感じさせるまろやかさときたら!ドロドロじゃなかったではないですか!

 

 参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・オー・ブリオン1988」を91点と評価しています。

1988年のシャトー・オー・ブリオンは、1966年ものと同じような方針に従ってつくられたが、こちらの方がより凝縮していて、力強い。タバコ、熟した黒い果実、スパイシーなオークを思わせる濃密なブーケは、ちょうど熟成が始まった状態である。

ミディアムボディで、豊かで、タンニンが強く、果実味が良好な芯を形成している。このワインは今世紀末まで貯蔵しておくことが必要だろう。

ロバート・パーカーボルドー第3版」より引用】

 

⑦オー・ブリオンを飲んで人生がどのように変わりましたか?

f:id:expc_fukuoka:20200307082844j:plain

ワイン会で「ワインは評価するものではなく恋愛するもの」と学びました

 私は今までワインは、飲めないし、飲まないし、好きになれない、とタカを括ってたんですね。それが変わりました。確かに顔は赤くなりますよ。

それがなにか?愉しくなっていいじゃないですか!

 昔はベロンベロンに酔って、親友が東京から来てもすぐに寝てしまったんですよ。そういうことを考えれば今回ワイン会を通して貴重な話も沢山聞けましたし、シラフではないけど、ちゃんとした状態で参加できたということですね。

 

 個人的な感想で大変恐縮ですが、翌年の1989年に家内と知り合い2年後結婚するわけですが、家内との夫婦の歴史を感じさせてしまう、味わいそのものの変化なのですね。「フルーティー→コク(充実感)→さらりとした円熟味」といった具合に。

 この EXPLORERS CLUB 主催のワイン会で学んだのは、ワインは評価するものではないんですよね。そんなくだらない飲みものじゃなく、恋愛なんです。恋い焦がれて、一つになって恋が成就する。大好きな人だから知りたくなるし、大好きな人との思い出がいつまでも残るように、あのワインを飲んだ記憶も残り続ける。

 

⑧そのワインに出会う前の入江さんにとってワインとは?

 ワインは、アルコール度の高い飲み物で、私の食事の際には遠慮しなければいけないものだったんですね。飲めば寝てしまう。ワインに酔わされてしまう飲み方で、私は他のお酒以上に避け(サケ)ていました。

 

⑨今の入江さんにとってワインとは?

 ズバリ、「温故知新」です。ワイン自体が年代物のオールドヴィンテージワインですから、その古い物を開けてこれからは産地やぶどう、年代にこだわってこういう機会を得たいと思いましたね。歴史を継承する遊びですね。

 

⑩これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて

 よくある話なんですけど、飲食店行った時にワイン一本開けようとしたら一本1万円くらいするから代金を考えてグラスワインにしてしまいがちです。

 しかし、多少高くても開いてあるボトルで少量を提供してもらえるのでしたら産地とぶどうを伝えたり、よく言われるワイン用語を用いてソムリエにリクエストしてみてはいかがでしょうか?

 私もそうですが、下調べを一つして臨まれることをお勧めします。自分が拒否してた世界を初めて愉しく味わえること。飲めないお酒、飲むのが嫌いなお酒がそうでなかったという驚きを見つけることができますよ。

「インタビュアー:山下裕司 WRITING:落合予示亜」 

 

 

●【最後に 】

f:id:expc_fukuoka:20200327060139p:plain

 インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。

 EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。

 メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。

 こちらの申し込みフォームにご登録いたただきますと『次回の開催案内』をメールにてご連絡させていただきます。

 EXPLORERS CLUBの『詳細&ご入会』はこちらです。

 

<<Explorers Club は2020年11月に解散しました。>>