【私の人生を変えた一本のワインNo.38】シャトー・タルボ1985
- 私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
- 本日インタビューしたのは、この方
- ①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
- ②なぜ、『シャトー・タルボー1985』を選んだのでしょうか?
- ③シャトー・タルボ1985と初めて対面して
- ④どんな抜栓だったんですか?
- ⑤「シャトー・タルボ1985」一口目はどうでしたか?
- ⑥シャトー・タルボ1985に出会い、人生がどう変わりましたか?
- ⑦シャトー・タルボに出会う前の千田さんに、とってワインとは?
- ⑧今の千田さんにとって「シャトー・タルボ1985」とは?
- ⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
- ●【最後に 】
私の人生を変えた一本のオールドヴィンテージワイン
この『死ぬまでに飲みたい!おすすめオールドヴィンテージワイン』ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
突然ですが、あなたには「人生を変えた一本のワイン」がありますか?大切な人と一緒に記念日に飲むワイン、尊敬する人に薦められたワインなど、あなたにとって特別なワインは何か?
ではなく、、、
本当にそのワインがきっかけで人生を変えたワインをインタビューしてご紹介するシリーズです。それぞれの「人生を変えた一本のワイン」をご紹介しています。
本日インタビューしたのは、この方
千田 さん(セラピスト)
大手企業に勤務しながら、10 代の頃から2,000人以上の女性のバストケアアドバイスをしてきた経験から、バストだけでなく恋愛やパートナーシップなど女性のお悩み相談を受けている。ヒーラー。ソプラノ歌手。EXPLORERS CLUB では声楽リーダーをしている。
①人生を変えた一本のオールドヴィンテージワインは、何ですか?
2020年3月、EXPLORERS CLUB 主催のワイン会で飲んだ『シャトー・タルボ1985 』35年前のワインです。
※シャトー・タルボ(Chateau Talbot)とは?
シャトー・タルボ(Chateau Talbot)は、凝縮しつつもなめらかなスタイルは、まさにボルドーワインの優雅さと偉大さの典型。
所有するブドウ畑の面積は「107ha(ヘクタール)」と、メドック地区でも2番目の大きさを誇っている。タルボはボルドーでは唯一、手摘みで収穫されたブドウを、余分な水分を飛ばすために温風の出るトンネルをくぐらせる。元来ピーチなどのデリケートなフルーツに施されてきた手法である。
15世紀のイギリス統治時代にサン・ジュリアン一体をタルボ将軍が治めていた。タルボ将軍はイギリスの歴史の中でも名将として有名で、シェイクスピアの「ヘンリー6世」にも出て来る、英国人にとっては歴史上の英雄です。
これが名前の由来で、1453年にカスティヨンの戦いで敗れた、イギリス人のギィエンヌ総督、英軍指揮官タルボ将軍、シュルベリー伯爵にちなんだもの。
※1985年(昭和60年)の出来事
男女雇用機会均等法が成立。群馬県の御巣鷹の尾根に墜落した『日航ジャンボ機墜落事故』もこの年。初の日本人宇宙飛行士誕生し、携帯電話の先駆けとなるショルダーフォン(NTT)も登場。
ファミコン用ソフト『任天堂スーパーマリオブラザーズ』が発売され空前の大ヒット。ヒット曲はチェッカーズの『ジュリアに傷心』で、映画では『ゴーストバスターズ』がランキングNo.1になっている。
②なぜ、『シャトー・タルボー1985』を選んだのでしょうか?
私は、お酒が全く飲めないので、お酒を飲むことはほとんどありません。会社の飲み会などがあっても、飲まないので車で参加します。そんなですから、今までワインは飲む機会もありませんでした。
今までもワイン会があっても参加する気は全くなかったのですが、この「シャトー・タルボ」は名前にすごく惹かれましたし、自分の生まれ年に近く、どんな人生を歩んできたのだろう?と知りたくなり、人生で初めてワイン会というものに参加しました。
私が興味を惹かれたのは、「タルボ」という名前の音の響きです。発音から強さと、まろやかな感じがしたんです。音の響きが、素敵じゃないですか?
上の歯から舌先を素早く離すことによって生まれる破裂音からなる”タ”。舌を上の前歯の付け根にあて、舌先を素早く離すことによって生まれる”ル”。上唇と下唇をくっつけた状態から、空気を噴き出すように破裂させて発音する”ボ”。
「タルボ」の”タ”と”ボ”が、すごく印象的な破裂音に対し、舌を巻いてるような発音の”ル”が、なんだか特にSexyに感じるんです。この3語の発音の違いによる心地よいリズムが刻める音の響きが、とても好きなんです。
そして実は私、ロゴとか見るの大好きなんです。エチケットはワインの顔だと思いますので、何かロゴからシャトー・タルボのことを知れるんじゃないか?と思って、ワイン会が決まってから、当日までロゴマークを調べました。
調べていくと、ヴィンテージによって、エチケットの柄が違うということに気が付いたんです。面白くなって、いろんなヴィンテージのエチケットを調べて並べてみたら、共通点もたくさんありますが、違うところもたくさんあって、面白くてハマってしまいました。
③シャトー・タルボ1985と初めて対面して
ワイン会当日までの間、「エチケットから味を想像してみよう!」と思い、いろんなヴィンテージのシャトータルボのエチケットを探しました。年代が変わっても途中で紋章が変わっても書かれている言葉やエチケットの大きさが変わっても「TALBOT」の文字はあまり変えていないように見え、そこには「英軍指揮官タルボ将軍」の名前がついたワインを常に最高の品質を保とうとする覚悟のようなものを感じます。
スッキリとしたラベルの中に少し丸みを帯びた肉厚な「TALBOT」の文字は、「甘さ控えめでほんのり果物の甘さがあり、スッキリとした中にも強さもあって、あまり油の多くないヒレ肉と合わせたら美味しそう!!」というイメージを思い浮かび上がらせます。とは言っても、お酒が弱く、ワインを飲んだこともほぼないので、あくまで想像です(笑)
実際に、ワイン会当日に「シャトー・タルボ1985」と対面して、そのボトルを見ると、すごい存在感があるのかと思っていましたが、私がイメージしていた勇猛な「英軍指揮官タルボ将軍」というよりは、思ったよりスッキリしていて、大切に保管されているんだと感じました。静かに時を待っている感じで、あまり35年前のワインだという時代を感じませんでした。
④どんな抜栓だったんですか?
私は学生の頃に、結婚式場で働いていましたので、普通の新しいワインはいつも抜栓していました。でも、35年もののオールドヴィンテージワインである「シャトー・タルボ1985」は、そういう新しいワイン達とは違うのだろうと思っていましたので、かなり集中して抜栓を見ていました。
周りの人は気が付かなかったようですが、抜栓の途中で、コルクが割れた瞬間に一瞬だけ、部屋に波紋が広がったみたいに、タルボのお花というか葡萄の強い香りがフワ〜っと香ったんです。でも一瞬で消えてしまいました。
ただ抜栓した後は、全然香りがしなかったんです。抜栓時のコルクが割れた一瞬だけ強く香ったのは、タルボから私へのプレゼントかも知れませんね(笑)
⑤「シャトー・タルボ1985」一口目はどうでしたか?
地球のエネルギーを吸って育った葡萄が手摘みされ、沢山の人が手をかけ樽で熟成され、瓶に詰められ、35年間どなたかが所有していた1本のワインを今日集った仲間で味わう喜びは感動で涙が出そうでした。
最初の一口は、咽くるようなアルコールと鉄を感じる尖ったピリピリっとした感覚に、ゴホゴホと咳き込んでしまいました。二口目に感じたのは、エチケットから想像していたのとはまったく違うもの。途中抜栓の時に香ってきた果物の芳醇な香りから連想した味とは違い、物静かな口数の少ない寡黙な青年のイメージです。かと言ってエネルギーがないわけではないので、秘めたる想いを持っていて、色々考えているけど口には出さないようなそんな感じでした。
私の目の前にあるグラスのワインは、時間が経てば経つほどに尖りがなくなり、角が取れ、寡黙な青年にも可愛さが出てきました。でも、なんだかスッキリしすぎて物足りない感じもありました。2/3くらい飲んだ頃、ドクンドクンと自分自身の心臓の鼓動が聴こえはじめ、シャトー・タルボと共鳴しているのを感じて涙が溢れてきました。
参考までに、ワイン評論家のロバート・パーカー氏は、この「シャトー・タルボ1985」を89点と評価しています。
1985年のタルボは1982年ものを小型にしたようなワインであり、現在、飲むのにはうってつけである。色は非常に深みがあり、熟した、豊かなベリーのような香りがあり、しなやかで肉付きがよく、ミディアムボディである。たっぷりとした果実味があり、フィニッシュはなめらかで優雅で、すばらしくバランスがよい。
⑥シャトー・タルボ1985に出会い、人生がどう変わりましたか?
霧が晴れたみたいに、止まっていた時間が動き出した感じがしています。何かをどこかに忘れてきたようなエネルギッシュにガツンと来ない感じが、今の突き抜けられない、全力を出せない、バーンといけない自分と重なり、もどかしいような悲しいような、でも嬉しいような、、、不思議な気持ちでした。
本来持っていたはずなのに、どこかに「情熱を忘れてきた」という感じが、今の自分に重なっていました。自分の中では燃やしているものの、なぜだか燃えきらないという感じでした。
最後に、タルボの澱(おり)の部分をみんなで分けた時に、今まで飲んだタルボと全然味が違っていたんです。上の方を飲んだ時は、寡黙な青年という情熱の感じないようなワインのイメージだったんですが、澱の部分は、情熱を感じさせるような豊潤な香りを感じました。澱に近い部分が、一番美味しかったです。
それを飲んで、実はソレを無くした訳じゃなく、自分の中にあるのに気付いてなくて、実は「私にもあったね!」と、ソレを持っていたということに気付きました。ワイン会の帰りは、電車の中で「あれもしたいな!これもしたいな!」と、自分の中のワクワクするエンジンが掛かりました。
⑦シャトー・タルボに出会う前の千田さんに、とってワインとは?
日本のワイン生誕の地といわれる山梨県。実は、主人の実家が山梨で、私自身も学生時代に山梨にいたのですが、、、私は飲めませんので、私にとってワインは「ただのお酒」という感じでした。
⑧今の千田さんにとって「シャトー・タルボ1985」とは?
こんな素敵なワイン会は、他に無いと思います。タルボに対する想いが、どんどん集まっていって形になっていく感じ。全員の意見が出揃って「今回のタルボはこんなだったね」という今回のシャトー・タルボ1985のワイン会が完成するんですよね。
参加者が全員同じ意見でも面白くない訳で。そこに個人の意見、個人の個性があるから、彩り豊かになっていくんだと思います。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者であった「ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)」は、リハーサルのときに「音符ではなく、楽譜の後ろにある“音楽”を演奏して欲しい」と、楽団メンバーによく言っていたそうです。ベルリン・フィルのメンバーと30年以上、意見を通い合わせて共に音楽をしてきたからこそ、彼らと一緒にそこまで到達できたんだと思うんです。私は、そういうみんなで積み上げて作る時間がとても好きです。
みんなで一本のワインを飲んで、そのワインについて「私はこう思う、、、」と話してワイン会を作り上げていくという、そのプロセスは、私が今までやってきたコーラスに似ている部分があります。コーラスを作り上げるときって、「この曲はこんな感じ」という各自のイマジネーションを作り上げ、そのイマジネーションを声に出して合わせて行くんです。
コーラスもみんなが同じ音で歌ってても、素敵なコーラスにはなりませんからね。コーラスというものは、歌を一度自分に取り込んで、人生と重ね合わせて、それらの感情らを声にして歌うんです。今までの人生が投影されます。
ワインも同じで、ワインを飲んで、一回自分に取り込んで、自分の人生と重ね合わせて「私はこう思う」という意見を話ししていくワイン会というのは、コーラスと似てますね。
⑨これからオールドヴィンテージワインを愉しむ人に向けて
お酒を飲めない人こそ、ワインを飲んで欲しいと思います。特にオールドヴィンテージワインを飲んで欲しいです。一本のワインを時間をかけながら、ひと口ひと口、自分と向き合い、人生と絡めながら飲むビンテージワインは格別です。
お酒を飲む機会というと「飲み会」を思い浮かべると思います。飲み会は、お酒を結構な量を飲むイメージだと思うんですけど、ワインは少量でいろんなことが愉しめる飲み物です。香りも味も愉しめますし、歴史や背景だとか、いろんなことに想いを馳せて愉しめます。
私は、葡萄を作っている木の状態から、様々な人の手を伝わって、ワインが出来上がり、私たちの口に入るまでの時の流れや、ワインを作っているシャトーは「どういう風にワインを飲んで欲しいのだろうか?」とか、35年経っているタルボが、5年前に飲んだらどんなワインだったんだろうか?ということを想像したり。ホントに少量を口に含みながら、いろんなことにイマジネーション膨らませられる素敵な飲み物です。とっても愉しいですよ。
「インタビュアー WRITING:山下裕司」
●【最後に 】
インタビュー記事中に出てくるエクスプローラーズクラブが主催するワイン会は、一本のオールドヴィンテージワインだけを10名ほどのメンバーでじっくり愉しみ、知識や感想を共有し、お互い学びを得ながら上質で美しい時間を形成する会です。福岡地区のワイン会はインタビュアーでもある山下が開催しています。
EXPLORERS CLUBでは、全国に地区(支部)があり、地区でのワイン会を開催しています。
メンバーになると全国で開催されるワイン会にもご参加いただくことが可能です。EXPLORERS CLUB 福岡では不定期ですがクラブメンバー以外の方にもご参加いただけるオールドヴィンテージワイン会を開催しています。
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